液晶
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液晶(えきしょう)は、固体と液体の両方の性質を示す状態の一つにある物質である。また、その状態を示す場合もある。
これを利用したディスプレイ・テレビ受像機については、液晶ディスプレイ・薄型テレビを参照のこと。
目次
1 概要
2 液晶の分類
3 歴史
4 キラリティ(掌性)の効果
5 強誘電性液晶
6 天然の液晶
7 用途
8 脚注
9 参考文献
10 関連項目
11 外部リンク
概要
液晶状態は、一定の化合物(棒状や円盤状の構造をもつ分子が多い)において結晶と液体の中間状態として現れる状態である。中間状態としては液晶のほかに柔軟性結晶(プラスチック・クリスタル)がある。結晶では分子の位置と方向に3次元空間のどの方向に対しても長距離秩序がある。それに対し液体では分子の位置・方向とも長距離秩序はない。
液晶は厳密には結晶と液体の中間状態のうち、分子の方向の何らかの秩序は保っているものの、3次元的な位置の秩序を失った状態である。つまり、液晶には大きく分けて異方性を有する液体、1次元的な重心秩序をもった2次元液体、2次元的な重心秩序を持った1次元的な液体の3種類がある。ただし、歴史的には3次元的な位置秩序を持った中間層の中にも液晶と呼ばれてきたものもあり、定義が厳密に守られているわけではない。一方の柔軟性結晶は3次元的な位置の秩序を保っているものの、粒子の方向の秩序が失われた状態である。
液晶という名称は、液体(Liquid)の流動性と結晶(Crystal)の異方性を合わせ持つことに由来する。米国で発明された液晶という言葉が定着していなかった1960年代には、液体水晶という名称が使われていたこともあった。
現在、液晶を応用した機器として液晶ディスプレイが広く使われており、液晶という単語が液晶ディスプレイのことを指して使われることが多くなっている。
液晶の分類
液晶は大きくサーモトロピック液晶(Thermotropic Liquid Crystal)とリオトロピック[1]液晶(Lyotropic Liquid Crystal)に分類される。サーモトロピック液晶は、熱や圧力によってのみ相変化をするものであるが、リオトロピック液晶は、多成分からなり、温度と成分の構成によって相変化をする。
代表的な液晶相としてネマティック液晶(Nematic Liquid Crystal)やスメクティック液晶(Smectic Liquid Crystal)などがある。
ネマティック液晶は上述の異方的液体に対応する液晶のことである。位置の規則性がないので、液体と同様の流動性を有している。市販の液晶表示装置や液晶温度計に用いられているのがこの種の液晶である。スメクティック液晶は少なくとも1次元的な重心秩序、別の言葉で言うなら層状構造を有する液晶である。また、層構造に対して分子が傾いているかどうかや、それぞれの層の内部で各々の分子がどのような秩序を有しているのかなどから、さらにいくつかの相に分類される。模式的に分子は全て同じ向きに、層内の分子は完全に一つの平面にあるかのように描かれることが多いが、X線回折などの結果から実際の秩序はより緩やかであることがわかっている。
歴史
液晶は1888年、オーストリアの植物学者F・ライニッツァーによって発見された。彼は、コレステロールと安息香酸のエステル化合物を加熱すると2度融解することを見い出し、その原理の解明をドイツの物理学者O・レーマンに委託した。レーマンは液体でありながら、複屈折や異方性といった性質を持つことを発見しこの不思議な物質を「流れる結晶」と位置づけた。液晶は液体と結晶の中間=液体結晶ということで、後にG・フリーデルによって「液晶」と名づけられた。
キラリティ(掌性)の効果
液晶を構成する分子が不斉炭素を持ち、系がラセミではなくキラリティを有する場合には液晶の分子軸の配向方向が空間で連続的に変化し、その結果として巨視的な螺旋構造が出現する。螺旋の周期は分子種により異なるが、周期に対応した光を反射する性質があるので、螺旋周期が可視光の波長程度となると、呈色する。液晶によっては温度により螺旋周期が変化する。これを活用したのが液晶温度計である。螺旋構造を持つネマティック液晶をコレステリック液晶と呼ぶ。これは、この種の液晶がコレステロール誘導体で最初に発見されたためである。コレステリック液晶は熱力学的にはネマティック液晶と区別がないので、ネマティック液晶の一種としてキラルネマティック液晶(Chiral Nemaic Liquid Crystal)と呼ぶこともある。スメクティック液晶で不斉による影響が出る場合はキラルスメクティック液晶(Chiral Smectic Liquid Crystal)と呼ぶ。
キラル液晶の不斉の起源のほとんどは分子中に含まれる不斉炭素であるが、軸不斉が使われることもある。最近、不斉炭素を有しないベントコア分子からなる液晶でも巨視的なキラリティが出現することが見いだされているが、その巨視的なキラリティの発現機構は必ずしも明確ではない。
強誘電性液晶
キラルなスメクティックC液晶相(分子が傾いた層状構造をもつ液晶相)において、分子間で電気双極子の整列が起こり、巨視的な自発分極が生じ強誘電性が生じる場合がある。強誘電性液晶の特徴として、高速な電場応答(通常1msを切る)やメモリ効果(電場を切っても分子配向が維持される)が挙げられる。この高速応答性を利用した強誘電性液晶ディスプレイ(FLCD: Ferroelectric Liquid Crystal Display)が、一時キヤノンから発売されていた(1995 - 1999年)。
天然の液晶
生体膜は、主にリン脂質と水からなり、二分子膜構造をとる一種のリオトロピック液晶である(構造的にはスメクティック相)。
甲虫の羽根には、コレステリック液晶と同様に一方の円偏光を選択的に反射するものがある。構成する成分はキチンや弾性タンパク質といった高分子であるため流動性は失われているが、コレステリック液晶中の分子と同様にらせん状の分子配列が上記の円偏光反射の原因である。
用途
- 液晶ディスプレイ
- 示温剤
- 繊維強化プラスチック
脚注
^ ライオトロピックとも表記される
参考文献
液晶の専門書として以下のものが良く知られている。
- P. G. de Gennes and J. Prost; The Physics of Liquid Crystal; Oxford University Press; ISBN 0-19-851785-8 (second edition, paperback, 1995).
- チャンドラセカール; 液晶の物理学; 吉岡書店; ISBN 4-8427-0255-9(原書第2版, 1995).
- 竹添秀男;渡辺順次 液晶・高分子入門; 裳華房; ISBN 4-7853-2912-2 (2004).
- 折原 宏 液晶の物理 (材料学シリーズ); 内田老鶴圃; ISBN 4753656225 (2004).
- 福田敦夫;竹添秀男 強誘電性液晶の構造と物性(フォトニクスシリーズ); コロナ社; ISBN 978-4339005585 (1990)
関連項目
- 日本液晶学会
- ラメラ構造
外部リンク
- 日本液晶学会
- 国際液晶学会
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