経済












インフレーションのアレゴリー(幕末、1868年より前)


経済(けいざい、希: οικονομία、羅: oeconomia、英: economy)とは、社会が生産活動を調整するシステム、あるいはその生産活動を指す[1]




目次






  • 1 概要


  • 2 語源


  • 3 経済体制


    • 3.1 伝統経済


    • 3.2 市場経済


    • 3.3 計画経済




  • 4 経済成長


  • 5 「経済」の派生的用法


    • 5.1 金銭的


    • 5.2 地理的




  • 6 脚注


  • 7 参考文献


  • 8 関連項目





概要


生活に必要な物やサービスは需要と供給の上に成り立っており、それらの消費のために生産が必要となる。社会が生育し近代化する過程において、自給自足から生活に必要な物やサービスを交換し合うシステムが構築されることでさらに豊かになっていった。この交換を潤滑にするものが金銭であるが、同時に束縛しうるのも金銭、厳密には貨幣供給システムである。近代社会における経済は、物やサービスを生産する企業、物やサービスを消費する消費者である家庭(家計)、公共的サービスを提供する政府の3つに分けられる[2]。以上のような経済を主な対象とする学問として、経済学がある。



語源


日本語の「経済」は英語の"economy"の訳語であるが、この語は古典ギリシャ語の οικονομία(家政術)に由来する[3]οικος は家を意味し、νομος は規則・管理を意味する[3]。従って、economyの本来の意味は家庭のやりくりにおける財の扱い方であるが、近代になってこれを国家統治の単位にまで拡張し、以前の意味と区別して政治経済学(political economy)という名称が登場する(この名称は後にアルフレッド・マーシャルによってeconomicsと改められた。)。



日本のみならず漢字文化圏のほとんどの国では、上記のような"economy"を意味する「経済」の語が普及している。この「経済」という言葉は、幕末維新期の日本において、初め(古典派経済学における)"political economy"の訳語として導入された。この訳語の考案者を福澤諭吉とする文献もある[3]が、福沢が書物の名前ないし講義名として「経済」という語を用いた時点(1862年、1868年)で、すでに1862年発行の辞書『英和対訳袖珍辞典』がpolitical economyの訳語として「経済」「経済学」の訳語を挙げており、同じ年に西周が手紙の中で「経済学」の語を用いている。これらの点から、福沢一人をこの訳語の作者とするのは困難である[4]。訳語として同時期に資生も提唱されたが、こちらはあまり普及しなかった。


漢語における「経済」とは、「世の中を治め、人民を救う」ことを意味する経世済民(若しくは経国済民)の略語であり、これは東晋の葛洪によって記された『抱朴子』(ほうぼくし)の記述が初出とされる[5]。また今日でいう経済と意味が類似・近接した古典的漢語としては他に「理財」「食貨」「貨殖(興利)」などがあった[6]。"(political) economy"の訳語としての「経済」の語法は、やがて翻訳を通じて「経世済民」の語を生んだ中国に逆輸入されたため、漢語文化圏において本来の(経世済民としての)意味は希薄になり、今日の用法が定着するに至った。



経済体制





江戸時代の貨幣(1714年)


経済活動は法律をはじめとする様々な条件によって制約されている。それらの制約のもとで、社会は人々のニーズを満足させるように供給を組織化する。この組織化された供給の仕組みを経済体制[7](Economic system)という。代表的な経済体制として以下の3つが挙げられる。



伝統経済



伝統経済(Traditional economy)とは生産や分配などの主要な経済活動が慣習や文化によって大きく規定された経済である。集落や村落などの比較的に小規模な集団の経済にしばしば見られる形態であり、生産活動が個人の家柄や集団の文化によって定められているために予測可能性が高く、継続的かつ安定的な供給が維持される。



市場経済


市場経済(Market economy)とは企業や個人が自己利益を最優先して物財を生産し、市場の仕組みによって分配する形態の経済である。規範や指令もなく、市場における消費の動向によって生産活動が規定される特徴があり、個人の自由度が高く、意思決定が分散的であり、また希少性の変化に柔軟に反応できる長所がある。ただし経済理論が保証する市場経済の効率性は、財産権、取引の自由、企業参入退出の自由、完全情報などの条件が必要であり、これらの条件が満たされない場合には市場の失敗が生じる。



計画経済


計画経済[8] (Command economy) とは中央当局によってあらゆる経済活動が運営されている形態の経済である。指令経済とも言う。産業への必要物資、生産目標、生産割り当てなどが定められ、その計画に基づいて経済活動が遂行される。経済資源や労働力を計画的に運用することができるために特定の産業を集中的に発展できるとされる。一方で、計画経済の下では労働者のインセンティブが欠如しやすいという欠点がある。また、計画経済の存立可能性をめぐってなされた議論として経済計算論争nUがある。



経済成長



経済成長とは経済規模の増大や生産性の向上といった経済的な能力の伸びを示す概念である[9]。国あるいは地域の経済規模は、国民総生産(GNP)や国内総生産(GDP)によって測られる。これら産出量の変化率が経済成長率であり、狭義にはこの変化率の長期的上昇傾向を指して経済成長と呼ぶ[10][11][12]。経済成長を決定づける要因や、経済成長率と失業率、物価などとの関連を分析する経済学の分野としてマクロ経済学がある。



「経済」の派生的用法



金銭的


効率的な経済活動であることから転じて、商品の購入に際して金銭負担が少なくてすむことを「経済的」「エコノミカル(Economical)」という。飛行機で最も低価格な座席等級を「エコノミークラス」と呼ぶのもこうした用法の1つである。



地理的


日本経済、アメリカ経済、中国経済などのように一国家の経済活動を「経済」と呼ぶことがある。更に狭い地域や都市を一括りにして九州経済、大阪経済などと呼ぶこともある。



脚注


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  1. ^ 『クルーグマン ミクロ経済学』の経済(economy)の定義、およびコウビルド英英辞典の項目economyより。


  2. ^ 金融用語辞典 有馬秀次 Financial Artist Academy

  3. ^ abc松原聡 『日本の経済 (図解雑学シリーズ)』 ナツメ社、2000年、26頁。


  4. ^ 馮天瑜「中国語、日本語、 西洋語間の相互伝播と翻訳のプロセスにおける 「経済」 という概念の変遷」『日本研究』第31集、p.169:http://hdl.handle.net/123456789/777


  5. ^ ただし馮天瑜によれば、『抱朴子』に登場する表現は「経世済俗」である。馮天瑜「中国語、日本語、西洋語間の相互伝播と翻訳のプロセスにおける「経済」という概念の変遷」『日本研究』第31集、p.160([1])参照。「経済」は唐の太祖(李淵)の造語とする説もある[要出典]


  6. ^ 「理財」は『易経』繋辞伝上に登場する古い漢語であり、詳細は当該項目を参照。また紀伝体による中国歴代王朝の正史(二十六史)において制度史・社会史・文化史を扱う「志」のなかで、社会経済史に関する巻は「食貨志」と称される。また二十六史の筆頭である『史記』の列伝中、富豪・大商人を扱った巻は「貨殖列伝」と題されている。


  7. ^ 『アメリカの高校生が学ぶ経済学 原理から実践』352頁、経済システム(Economic system)の定義。


  8. ^ 『アメリカの高校生が学ぶ経済学 原理から実践』33-39頁では経済システムを伝統経済、市場経済、指令経済に分類しているが、指令経済に関しては計画経済と表記した。


  9. ^ 『ブリタニカ国際百科事典 1 - 20』第6巻351頁


  10. ^ 『スティグリッツ マクロ経済学 第2版』533―572頁


  11. ^ 『クルーグマン ミクロ経済学』用語集


  12. ^ 『ブランシャール マクロ経済学』27-35頁



参考文献







  • ポール・クルーグマン、ロビン・ウェルス著、大山道広、石橋孝次、塩沢修平、白井義昌、大東一郎、玉田康成、蓬田守弘訳 『クルーグマン ミクロ経済学』 東洋経済新報社, 2007年

  • ゲーリー・E・クレイトン著、大和証券商品企画部訳、大和証券教育事業部監訳 『アメリカの高校生が学ぶ経済学 原理から実践』 WAVE出版、2005年

  • 金森久雄、荒憲治郎、森口親司編『経済辞典(第四版)』有斐閣、2006年


  • N・グレゴリー・マンキュー著、足立英之、石川城太、小川永治、地主敏樹、中馬宏之、柳川隆訳 『マンキュー経済学1 ミクロ編(第2版)』 東洋経済新報社、2005年

  • N・グレゴリー・マンキュー著、足立英之、地主敏樹、中谷武、柳川隆訳 『マンキューマクロ経済学Ⅰ 入門編(第2版)』 東洋経済新報社、2005年

  • フランク・B・ギブニー編 『ブリタニカ国際百科事典 1 - 20』 ティービーエス・ブリタニカ、1972年


  • 伊藤元重 『入門|経済学』 日本評論社,1988年

  • 新井田宏 『経済学入門 ---ミクロ・マクロ経済学へ』 放送大学教育振興会、2000年

  • オリヴィエ・ブランシャール著、鴇田忠彦、知野哲朗、中山徳良、中泉真樹、渡辺愼一訳 『ブランシャール マクロ経済学 上・下』 東洋経済新報社、1999年。


  • ジョセフ・E・スティグリッツ著、藪下史郎、秋山太郎、金子能宏、木立力、清野一治訳 『スティグリッツ マクロ経済学 第2版』 東洋経済新報社、2001年。

  • 『コウビルド英英辞典 改訂新版』 桐原書店、1995年。

  • 牛致功1998 『唐高祖傳』



関連項目








  • 価値 - 労働 - 市場 - 貨幣 - 金融 - 利子 - 貿易 - 為替 - 国民経済計算 - 景気 - 費用 - 流通- 消費

  • Wikipedia:多数の言語版にあるが日本語版にない記事/経済









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