ユーロライナー (鉄道車両)





国鉄12系客車 > ユーロライナー (鉄道車両)



専用機関車EF65 105牽引「ユーロライナー」


ユーロライナーは、日本国有鉄道(国鉄)が1985年(昭和60年)に改造製作し、1987年(昭和62年)4月の国鉄分割民営化後は東海旅客鉄道(JR東海)が2005年(平成17年)まで保有していた欧風客車で、ジョイフルトレインと呼ばれる車両の一種である。




目次






  • 1 概要


  • 2 車両


    • 2.1 編成


    • 2.2 個室車


    • 2.3 展望車


    • 2.4 カフェラウンジ車




  • 3 専用機関車


  • 4 運用


  • 5 参考文献


  • 6 脚注





概要


名古屋鉄道管理局向けとして12系客車を改造して製作された欧風客車である。1984年(昭和59年)4月から設計が進められ、1985年2月に名古屋工場で改造に着手し、同年8月に完成した。東京南鉄道管理局の「サロンエクスプレス東京」、大阪鉄道管理局の「サロンカーなにわ」に続く国鉄3本目の欧風客車である。


愛称の「ユーロライナー」は名古屋鉄道管理局の公募による。改造費は総額2億5,000万円。


シンプルで透明感、開放感のあるデザインを基本としている。



車両


車体塗装はライトブルーイシュグレー(明るい青色がかった灰色)地にウルトラマリーン(群青色)の帯を車体側面上部・窓下(大・小の2本)・裾の計4本配している。展望車には矢と盾をイメージした「EUROLINER」のロゴを入れている。登場当時は展望車側面の展望窓と客室窓の間に、特急形電車と同様のステンレス切抜きのJNRマークを掲出していた。その後分割民営化時に撤去され、替わりに白抜き(車体塗装と同じライトブルーイシュグレー)のJRマークが、展望車窓下の太い帯の中(車掌室側から2番目の客室窓の位置)に追加された。



編成


編成は以下の7両で構成される。( )内は旧番号。



  • 1号車:スロフ12 701(スハフ12 15) - 展望車

  • 2号車:オロ12 701(オハ12 147) - 個室車

  • 3号車:オロ12 702(オハ12 148) - 個室車

  • 4号車:オロ12 703(オハ12 157) - カフェラウンジ車

  • 5号車:オロ12 704(オハ12 150) - 個室車

  • 6号車:オロ12 705(オハ12 186) - 個室車

  • 7号車:スロフ12 702(スハフ12 22) - 展望車


定員はカフェラウンジ車を除き各車両とも30人(カフェラウンジ車は定員外)。全車両ともグリーン車扱いとなる。展望車とカフェラウンジ車はトイレ・洗面所を撤去しているため、個室車はトイレ・洗面所を外側に向け背中合わせに連結されている。



個室車


6人部屋と4人部屋を交互に3室ずつ設けている。


透明感・開放感を強調するため、改造前に比べ屋根高さを上げて天井を高くし、屋根部には天窓を設け、側面窓も上下1,010mm×左右1,310mmに拡大され、固定窓となっている。


6人部屋は側面に窓・天窓を2枚ずつ割り付けた前後幅3,120mm、横幅2,020mmの応接間スタイルの部屋となっており、座席はクッションを置いた向かい合わせのソファシートとしている。4人部屋は側面に窓・天窓を1枚ずつ割り付けた前後幅2,150mm、横幅2,020mmの部屋となっており、座席は肘掛けのついたリクライニングシートとしている。


各部屋ごとにビデオモニター、オーディオ機器、冷暖房制御盤を設置している。カーステレオタイプのカセットデッキが各個室にあるのが特徴で、国鉄・JRを通じ個別にソフトを持ち込んで流せる唯一の車両である。天窓を設置したため荷物棚は省略し、座席の下に荷物収納箱を、天井部に小物入れを設けている。また各部屋とも部屋上部に折り畳み式の簡易寝台と着脱式のハシゴを設置している。このほか、冬場のスキー臨時列車でも使用するため、通路部にスキー入れを設置している。


本車では、種車の車体をほとんど用いず、台枠以上の車体を新造している。そのため、車体断面は14系寝台車などと同等の車両限界を一杯に使った大型断面となっている。外観上では、側面窓が固定窓となり、出入口が側面1か所のみとなっているほか、屋根高さが拡大されたため、冷房装置は従来の分散式冷房装置を用いず、屋根両端部に準集中方式のAU76形冷房装置を設置した。暖房装置は従来の電気暖房に代わり温風暖房としている。



展望車




展望車


展望車は従来のスハフ12形の車掌室側連結面を内側に向け、従来の連結面側の端部を切り落として展望室部分を接合している。


展望室は前面、側面とも下部に至るまで大部分がガラス張りとなっており、室内には大き目のスツールが置かれている。展望室以外の部分は一方に1人掛け、他方に2人掛け座席を配した横3列配置のリクライニングシートである。このリクライニングシートは前後の向きを変えるだけでなく、45度ごとに固定することが可能となっている。


展望車では従来と同様、窓上に荷物棚を設置しているほか、天井にはビデオモニターを設置している。窓は固定窓となっている。天井高さは従来のままで、冷房装置も従来のAU13形分散式冷房装置をそのまま使用している。連結面側を切断したためトイレ・洗面所はなくなり、出入口も側面1か所のみとなっている。暖房も従来どおり電気暖房としているが、展望室部分には温風暖房を新設している。



カフェラウンジ車




カフェラウンジ車内部


カフェラウンジ車は乗客全員が自由に利用できる定員外のスペースで、テーブルと椅子を窓側に向けて並べたビュフェとし、一端に調理作業用のカウンターを置き、他の一端はCD方式のカラオケステージを備えたミニホールとしている。他車同様出入口は側面1か所のみとし、別に外部からカウンター内に出入りするための業務用出入口を設けている。窓は固定窓に改造され、トイレ・洗面所は撤去された。冷暖房装置は従来どおりである。


カフェラウンジ車から撮影した映像を他車のビデオモニターに向けて放送することが可能となっている。



専用機関車


「ユーロライナー」の営業運転にあたり、電気機関車・ディーゼル機関車各1両を「ユーロライナー」専用機関車とし、客車と同じ色に変更することとなり、稲沢機関区に所属していた電気機関車EF64 66とディーゼル機関車DD51 592の2両が鷹取工場で塗り替えられた。ジョイフルトレインで専用機関車を用意した例は「ユーロライナー」が初である。


のちDD51 791, DD51 1037, EF65 105, EF65 106, EF65 112, EF64 35も塗り替えられた。DD51 592はJRに承継されず廃車。他の機関車も2008年(平成20年)までに全廃されている。




運用


1985年8月24日に名古屋駅で出発式を行い営業運行を開始した。当初は団体臨時列車のほか臨時特急「金星」や臨時急行「赤倉」などにも使用された。団体臨時列車、イベント列車のほか、「カートレインユーロ名古屋」「シュプールユーロ赤倉・志賀」などの一般臨時列車にも用いられた。なお「カートレインユーロ名古屋」では個室車のみを使用するため、同時期に運転される臨時特急・急行列車では展望車のみを他の客車と連結して運用された。


団体専用列車においても他車種との混結や3 - 5両の短編成で用いられ、特に有効長が短い飯田線での団体専用列車では個室車をすべて外した3両編成で運用されたこともある。


1987年の国鉄分割民営化後は、JR東海に承継された。


本編成と併結するため、普通車のスハフ14形1両、オハ14形4両、オハフ15形1両がシートピッチの拡大改造の上、同様の塗装として「ユーロピア」と称された。また、カートレイン用の自動車積載車としてマニ44形8両も同様の塗装とされている。


臨時列車の縮小により運用が減少し、老朽化が進んだこともあり、2005年に廃車となった。これによりJR東海のジョイフルトレインはいったんは全廃となった[1]




参考文献




  • 交友社『鉄道ファン』1985年11月号(通巻295号)p.48 - 57 藤原良和 新車ガイドスペシャル インプレッション・オブ・シンプル&クリア“ユーロライナー”


  • 電気車研究会『鉄道ピクトリアル』1985年11月号(通巻455号)p.54 - 58 山本喜正 国鉄名古屋鉄道管理局 新形欧風客車「ユーロライナー」デビュー


  • ネコ・パブリッシング『国鉄時代』2013年5月号(Vol.33) p.90 - 97 水谷年男 国鉄第三の欧風客車 ユーロライナー物語 誕生秘話と20年の軌跡



脚注





  1. ^ 2010年には117系電車のうちの1編成を改造したトレイン117が登場したため、同社は5年ぶりにジョイフルトレインを保有することとなったが、同社の国鉄型車両完全退役の方針を受け、こちらも3年ほどで引退し廃車された。












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