アイシュアイア
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アイシュアイア | ||||||||||||
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生息年代: 505 Ma PreЄ Є O S D C P T J K Pg N ↓ | ||||||||||||
アイシュアイアの復元図 | ||||||||||||
保全状況評価 | ||||||||||||
絶滅(化石) | ||||||||||||
地質時代 | ||||||||||||
古生代カンブリア紀中期 | ||||||||||||
分類 | ||||||||||||
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学名 | ||||||||||||
Aysheaia Walcott, 1911 | ||||||||||||
タイプ種 | ||||||||||||
Aysheaia pedunculata Walcott, 1911 | ||||||||||||
和名 | ||||||||||||
アイシュアイア アユシェアイア | ||||||||||||
英名 | ||||||||||||
Aysheaia | ||||||||||||
下位分類群(種) | ||||||||||||
本文も参照 |
アイシュアイア、およびアユシェアイア (Aysheaia) は、カンブリア紀に生息していた葉足動物である。バージェス動物群に属するAysheaia pedunculata 1種のみによって構成され、最初に記載された葉足動物として著名な1属である。
目次
1 形態
2 生態
3 分類
3.1 下位分類
4 参考文献
5 脚注
6 関連項目
形態
全長は大きいもので6cmほどの、脚の付いた蠕虫らしい外見をもつ動物である。
胴体は円筒状で、前後の端がわずかに細くなる。細かな筋のような環節状の構造があるが、これは付属肢および体節と対応していない。背側には特別な棘や甲皮などの附属体はない。頭部の前端は円柱状の吻が突き出し、その先端正面に口が開いており、周囲には乳状突起が並んでいる。そのやや後方側面から一対の特殊化した前部付属肢が横に伸びる[1]。一部の化石標本から、前部付属肢の付け根の付近には眼らしき構造が確認できる[2]。それに続く胴体部の下面には10対の葉足が具えており、それぞれの横には数本の棘が並び、先端には爪がある。第10対の葉足は胴部の終端を占めるため、尾らしき突出部はない[1]。
アイシュアイアのタイプ標本(化石)(Walcott 1911 により修整された写真)
アイシュアイアの化石(国立自然史博物館所蔵)
アイシュアイアの復元模型
アイシュアイアの復元模型
生態
アイシュアイアは底生性の捕食者であったと考えられる。カイメンとセットで化石が発見されることが多く、カイメンを食べていた、またはカイメンに宿って捕食者から身を隠す、などの説がある[1]。
分類
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簡略化された汎節足動物の系統における、提唱されたアイシュアイアの様々な系統的位置。 |
カンブリア紀による多くの「脚の付いた蠕虫」のような汎節足動物は、葉足動物(Lobopodians)として知られ、アイシュアイアはその代表的な一生物である。葉足動物とされた古生物は、汎節足動物における動物門(有爪動物、緩歩動物、節足動物)のそれぞれのステムグループ(初期脇道系統)として考えられたものがほとんどであるが、アイシュアイアの位置付けについては未だに定説がない[3]。
最初の記載はチャールズ・ウォルコットによる。彼はこの動物を環形動物と判断した。しかし、有爪動物について研究したハッチンソンは、この動物を有爪動物の祖先に当たるものとして注目した。当時、節足動物は環形動物から出たと考えられており、有爪動物は両者をつなぐ位置にあるとして注目されていたが、現生のものはすべて陸上性である。したがって、海産の化石動物でこれに類するものがあれば、節足動物と環形動物をつなぐものとして、系統学的に非常に重要なものとなる。アイシュアイアはまさにそれに当たる存在と思われたのである。しかしその後は、節足動物と環形動物は別系統(冠輪動物と脱皮動物)であると判明し、この説も研究の発展に伴い否定的に考えられるようになった[4]。
ウィッチントンは一連のバージェス動物群の見直しの中でこの動物に触れ、それが有爪動物に非常に似ていることを認めつつ、いくつかの相違点をあげて別個の群に属するものとの判断を示し、その後の多くの研究者は有爪動物に属するとの判断を支持していた[5][6]。しかし21世紀以降の殆どの分岐学的知見では、その共通点をアイシュアイアと有爪動物の直接的な類縁関係を反映していない、汎節足動物の共有原始形質であると見なしている[4][7]。澄江生物群からはさらにいくつものアイシュアイアに類する化石が発見されたことから、当時の海にはこの類(葉足動物)が少なくなかったことが確かめられた。
21世紀以降の多くの分岐学的知見は、アイシュアイアを基盤的な汎節足動物と見なしている[8][3][9]。一方で、アイシュアイアを緩歩動物(クマムシ)のステムグループに属とし[7][10]、もしくは特殊化した前部付属肢を有していることに基づいて、アイシュアイアをシベリオン科とGilled lobopodiansの葉足動物などと共に、節足動物のステムグループに位置するなどの少数派の意見もある[3]。
下位分類
アイシュアイア属は、カナダのバージェス頁岩によるAysheaia pedunculata 1種のみが認められる。アメリカのWheeler Shaleから出土し、同属の別種Aysheaia prolata [5]として記載された化石標本は、その後の再検証によりアノマロカリス類の1属スタンレイカリスの触手化石であると判明した[11]。
参考文献
- デレク・ブリッグス、ダグラス・アーウィン、フレデリック・コリアー著、大野照文監訳、『バージェス頁岩 化石図譜』、(2003)、朝倉書店、原著は(1994)、ISBN 978-4-25-416245-5
スティーヴン・ジェイ・グールド 『ワンダフル・ライフ - バージェス頁岩と生物進化の物語』 渡辺政隆訳、早川書房〈ハヤカワ文庫〉、2000年、ISBN 978-4-15-050236-2。
脚注
- ^ abcCanada, Royal Ontario Museum and Parks (2011年6月10日). “The Burgess Shale” (英語). burgess-shale.rom.on.ca. 2018年10月5日閲覧。
^ Ou, Qiang; Shu, Degan; Mayer, Georg (2012-01). “Cambrian lobopodians and extant onychophorans provide new insights into early cephalization in Panarthropoda” (英語). Nature Communications 3 (1). doi:10.1038/ncomms2272. ISSN 2041-1723. https://www.nature.com/articles/ncomms2272#f4.
- ^ abcSmith, Martin R.; Ortega-Hernández, Javier (2014). “Hallucigenia's onychophoran-like claws and the case for Tactopoda”. Nature 514 (7522): 363–366. Bibcode 2014Natur.514..363S. doi:10.1038/nature13576. PMID 25132546. http://dro.dur.ac.uk/19108/1/19108.pdf.
- ^ abEdgecombe, Gregory D. (2009-03-03). “Palaeontological and Molecular Evidence Linking Arthropods, Onychophorans, and other Ecdysozoa” (英語). Evolution: Education and Outreach 2 (2): 178–190. doi:10.1007/s12052-009-0118-3. ISSN 1936-6426. https://link.springer.com/article/10.1007/s12052-009-0118-3.
- ^ abRobison, R. A. (1985). “Affinities of Aysheaia (Onychophora), with Description of a New Cambrian Species”. Journal of Paleontology 59 (1): 226–235. http://www.jstor.org/stable/1304837.
^ Ramsköld, L.; Xianguang, Hou (1991-05). “New early Cambrian animal and onychophoran affinities of enigmatic metazoans” (英語). Nature 351 (6323): 225–228. doi:10.1038/351225a0. ISSN 0028-0836. https://www.nature.com/articles/351225a0.
- ^ abSiveter, Derek J.; Briggs, Derek E. G.; Siveter, David J.; Sutton, Mark D.; Legg, David (2018-08-01). “A three-dimensionally preserved lobopodian from the Herefordshire (Silurian) Lagerstätte, UK” (英語). Royal Society Open Science 5 (8): 172101. doi:10.1098/rsos.172101. ISSN 2054-5703. http://rsos.royalsocietypublishing.org/content/5/8/172101.
^ BUDD, GRAHAM E. (1996-03). “The morphology of Opabinia regalis and the reconstruction of the arthropod stem-group” (英語). Lethaia 29 (1): 1–14. doi:10.1111/j.1502-3931.1996.tb01831.x. ISSN 0024-1164. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1502-3931.1996.tb01831.x.
^ Smith, Martin; Caron, Jean-Bernard (2015-07-02). “Hallucigenia’s head and the pharyngeal armature of early ecdysozoans”. Nature 523: 75–78. doi:10.1038/nature14573. https://www.researchgate.net/publication/279175919_Hallucigenia's_head_and_the_pharyngeal_armature_of_early_ecdysozoans?_sg=tPP39HzR3Y85HSoIz3Z_3R9QAEnGoCkg5EeKDgfXJvdvXh_t77A9A1qUt-c97CtWxLRBFNlUJgVtxm7Tq6Lptr37rbSiCslHcg.
^ Caron, Jean-Bernard; Aria, Cédric (2017-01-31). “Cambrian suspension-feeding lobopodians and the early radiation of panarthropods” (英語). BMC Evolutionary Biology 17 (1). doi:10.1186/s12862-016-0858-y. ISSN 1471-2148. PMC PMC5282736. PMID 28137244. https://doi.org/10.1186/s12862-016-0858-y.
^ Pates, Stephen; Daley, Allison; Ortega-Hernández, Javier (2017). “Aysheaia prolata from the Wheeler Formation (Cambrian, Drumian) is a frontal appendage of the radiodontan Stanleycaris” (英語). Acta Palaeontologica Polonica 62. doi:10.4202/app.00361.2017. ISSN 0567-7920. https://doi.org/10.4202/app.00361.2017.
関連項目
- 汎節足動物
- 葉足動物
- 有爪動物
- 節足動物
- バージェス動物群